第一回水のまちシンポジウム講演者紹介4

2019年1月27日(日)水のにわ:水との共生

基調講演4 久山敦

久山 敦(くやま あつし)  

1947年     兵庫県生まれ

1970~82年   (財) 国際日本研究所に勤務

  1972~73年   英国王立キュー植物園留学

  1973~81年   妙高高原にて山野草試作

  1980~82年   那須高原南ヶ丘牧場にてロックガーデン築造~植栽に協力

1982~93年   兵庫県立 淡路ファームパークの大温室、ロックガーデン、

バードケージを設計から手がけユーカリ栽培からコアラ誘致までを行う

  1988年~   咲くやこの花館の高山植物室、ロックガーデンの設計、栽培指導

1993年~   「咲くやこの花館」勤務

2007年~   「咲くやこの花館」館長就任

(写真上 大阪市鶴見緑地にある「咲くやこの花館」の温室

写真下 普段入れない植物園の奥で育てられている蓮の花)

講演の題目 都市の中の自然と庭園

概要

 純然たる自然の世界では、生態系のバランスがとれてさえいれば、放置状態でも余り問題は起こりません。しかし日本の現状は、一部野生動物が殖え過ぎ、大切な植物が食害にあい、トリカブトのような毒草がはびこっています。オオカミの絶滅からか、猟師の数が減じたからか、安心できない状態になっています。とはいえ、本来あるべき自然の姿は、バランスの良かった過去を振り返ると大抵は答えがでてきます。

 一方、都市など人手のはいった場所では、植物栽培など人工と自然のあるべき姿が見いだせないケースもあります。庭園では作庭者や個人の好みで植栽されるケースがほとんどです。又、空き地では丈夫な外来生物の住処と化しているケースが随分とあります。そのような中にあり、柳川は独特の環境を人手でつくりあげてきました。人の評価は様々ですが、今後このような種々の生き物と共に生活できる素晴らしさを、地元の人たちが望まれるなら、共通の意識を持ち、種々の問題を解決しなければなりません。その例として、豊かな生活空間と観光地の共存、植栽植物の種類に関して柳川らしい一定の制限をもうける否か、油断をすると侵入してくる帰化植物や他の生物へどう対応するか、将来に備えて柳川の子供たちにどのように教えていくのかなどがあげられます。

 都市に残された自然と親しむことの大切さ、その先には地球を大切にする心が芽生えます。都市の植物園「咲くやこの花館」の方向づけ、自然の大切さへの啓蒙活動などをお話することで、柳川の素晴らしさ、ポテンシャリティを新たにして頂ければ幸いです。


(写真下 咲くやこの花館ではバナナやマンゴーなどのトロピカルフルーツも栽培されています)

<水研と久山さんの関わり>

久山さんとの出会いは、2017年6月11〜12日大阪市立大学で開催された「人と植物の共生ー都市の未来を考えるー」というシンポジウムの会場でした。久山さんは「植物の多様性:その重要さと都市部の植物園の役割」という題目で、英語で講演をされました。お聞きすると、英文科卒業で、あの有名なイギリスのキューガーデンで修業されたという経歴の持ち主です。日本有数の植物園の館長として日々植物に触れているだけでなく、世界50ヶ国以上の植物園を訪れ、世界的な動向にも詳しい。そういった立場からみた日本の植物界・自然界の現状についてのお話は示唆に富み、考えさせられる内容でした。

 講演のあとは植物園のツアーがあり、久山さんみずから参加者を案内してくださいました。植物園で公開しているのはほんの一部で、その広大な敷地の多くは、栽培と保存のために使われています。普段は入れない温室や南極の気候を再現した冷室、水を張った大鉢が並ぶ蓮栽培エリアなど、とても1日で回れるものではありません。中でも印象深いのは、昼食のときに試食させていただいた、咲くやこの花館で育てたマンゴーでした。マンゴーの国オーストラリアに長く住んでいた私たちにとって、マンゴーは日常的に食べる果物でしたが、咲くやこの花館でいただいたマンゴーは、それまで食べたことのない程のおいしさでした。

 九州ではあまり聞くことのできない、大都会の大きな植物園のトップのかたのお話は、植物好き、園芸愛好家、庭や自然に興味のあるかたには、またとない機会だと思います。

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